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2018年05月18日 (金) | 編集 |
病から何度も立ち上がって(立ち直って)明るく生きる勇気をたくさんの人々にくださった西城秀樹さんに、哀悼の気持ちを捧げます。
私は個人的には特別の関係がありませんでしたが、一方的に(片思いで)、さらなる感謝を申し上げている一人です。
食欲の形成、その食物行動へいたる概念図作成に悩んでいる頃、発想転換の得難いチャンスをいただきました。
食欲は生理的な状態変化を出発点に、さまざまな情報等を得て心理的、社会・文化的条件の影響を受けながら、摂食行動の方向を決めていくことが通常だと単純に考えていた私に、まったく逆の方向、情報受信→精神的な欲求等の触発→生理→心→行動……と進むことがあること、これはより内発的に、積極的に、直接的に具体的な食物選択行動に突き進むことが少なくないことを、教えてくれたのでした。

今年、53歳になる長男が小学3年のころの出来事です。
誕生日に友達が集まってお祝いをしてくれる時に、「ごちそうは何にしようか?」と問うと、即座に「カレーがいい」。カレーライスは私にとって玉ねぎを丁寧に炒めて作る自慢料理でしたので、さすが我が息子とうれしくなりました。
ところが続けて即座に「ハウスパーモンドカレーだよ。ずーっと食べたいと思っていたんだ!」私は愕然としました。
お誕生日はその子の好きな料理で祝うが、家族の約束事でしたので、仕方なく了解したのでした。
長男は、西城秀樹さんのコマーシャルソングをフルコース踊りまくって喜んだのです。
我が家にはありませんでしたので、子どもたちで買いに行き、誕生会は“西城秀樹”でした。
もっと驚いたのは「やっぱり、おいしいね」の連発だったことです。

毎日繰り返し、放映される魅力的な歌と踊り、友達もみんな知っていて、一緒に踊れる……。
スーパーマーケットではその音楽や広告の前、すぐ手の届くところに“実物”山積みしている。
それをかごに入れ、カウンターで代金を支払い、祝い膳の真ん中に登場した“西城秀樹のハウスパーモンドカレー”だったのです。

食生態学の基本的な概念図の一枚、「食欲の形成と食物選択・食物選択要因の形成の循環図」に、「提供される食情報」を明記し、もう一枚「人間・食物・環境のかかわりの循環図」の右側からの「フードシステム」と、左側からの「食情報システム」の各拠点に双方向の矢印をそれまでよりも太めに追記したのでした。
さらに一人ひとりの食体験の内身として(それまでは、食物を食べる体験優先に考えがちでしたが)内発的に積極的に選択的に進む食体験に「食情報の受信・発信・交流」を刻み込んだのでした。

その後、マレーシアで開催されたFAOのワークショップのスピーカーに招へいされた時に、上記の食環境の図は食情報の位置づけが明快だと、と座長からほめていただき、そのような考えを導入したきっかけについてと質問を受けました。
今なら国際的に高名な西城秀樹さんですから、上記の話をすることができるでしょうが、当時は、回りくどく他の事例で回答したことが悔やまれます。

あらためて、西城秀樹さんへ感謝し、冥福を祈ります。

2018年05月11日 (金) | 編集 |
総説のテーマが少し(いや、かなり)長いのですが、書きたい内容をそのままテーマにしました。

栄養・食教育の枠組み「料理選択型栄養・食教育」、主教材「食事の核料理(主食・主菜・副菜)を組み合わせる」・「3・1・2弁当箱法」による食事法:
1970年代からの食生態学研究・理論・実践の環をふりかえり、現在の栄養・食問題解決の課題を問う

内容や表現法を十分に吟味できないままの総説で、恥ずかしい限りですが、試行錯誤のプロセスをそのまま書いた全文を読んでいただくのが最良です。名古屋学芸大学健康・栄養研究所年報第9号に掲載されています。

身の程知らずに、82歳という年甲斐もなく、40年以上の間思策してきたことをそのまま書いたので、失礼なことも多々あるでしょうが、お許しください。
また、本総説では自分(達)自身が直接携わった研究・理論・実践の環(実際は実践・研究・理論・次の実践の環の順序)の事例を中心に書きました。
いわば、「食生態学」を視座に据えた自分(達)史のようなものです。関連する他の研究者等の研究・実践成果の活用に至っていません。
これらについては続編として次の段階でまとめたいと考えています。
本総説で、再確認したこと、新たに加筆した概念や定義、現在直面する緊急課題への対応等多くありますので、ぜひ、事実認識の違いやミス、意見、新たな課題等お聞かせいただきたく、お願いいたします。
課題のいくつかを挙げておきます。順不同です。

①(「目的と背景」に書いたように)現在全国中、栄養・食・健康関連の教育や行政で、食物選択の行動目標や評価指標として「主食・主菜・副菜を組み合わせる」食事法が使われている。
この学術的な論拠は、私の保健所栄養士時代の悩み(いわゆる研究成果が実生活の問題解決に役立ちにくい悩み)に端を発し、現場で蓄積してきた実践や研究報告等を、食生態学の視座で総括した論文、「料理選択型栄養教育の枠組みとしての核料理の構成に関する研究」(足立己幸.民族衛生.1984:50:70-107)にあるとされている。
しかし、すでに30年以上を経過し、食環境・食生活スタイル・健康状態や食事パタンは大きく変化し、かつ多様化がすすみ、とりわけ、経済格差・教育格差・健康格差・食格差等とそれらの連鎖が拡大し、深刻化する今だからこそ、本研究の出発からの願い、「誰でもが理解しやすい、実行しやすい、共有しやすい」食事法が必要になっている。
「何をどれだけ食べたらよいか」はだれでもが食べる時に直面する食物の形態である「料理」をどう選択し、「食事」にするかの方法、すなわち「料理選択型栄養・食教育」なら可能に思う。今こそ、出番到来のタイミングだといえる。
しかし、一皿盛り、丼物中心の食事スタイルの日常化が多い中でも「誰でも理解しやすい、実行しやすい、共有しやすい」ために、どう対応するか?

②解決策の一つは、食材料選択や栄養素選択に分解する昔ながらのほうほうがよいと考えられ、実行される場も少なくない。
これでは、究極的には「必要と考えられる栄養素の混合物」や、調理をしない人には理解しにくい「食材料群別重量表示」に分解する方法への逆戻りで、味も香りも形も見えない「モノ」の選択になる。

③私は、[日本の伝統的な食事文化として、実生活の中で育ってきた「主食・主菜・副菜を組み合わせる」食事法が栄養学的に有効である]という仮説で出発した検証結果を基礎に料理選択型栄養・食教育を提唱し、その主教材としての「主食・主菜・副菜を組み合わせる」や「3・1・2弁当箱法」による食事法を提唱してきた。
が、今流行している「1食分を全部大皿へ盛り合わせた皿盛りや」や丼物主流の新スタイルで、どのように活用できるかを検討している。
世界中が高く評価している日本型食事の特長は、個々の料理の美しさやおいしさだけでなく「主食と主菜と副菜を組み合わせた1食」という「食事の組み立て方」にあるのだから。

④これらの課題解決には
❶あいまいなまま使われている食生活のキーワードである食物、料理(主食、主菜。副菜も)、食事、食生活、食環境、食などの概念規定(定義)を学術的にも検討し、全国的にも関係者で共有できるようにすること。

❷「何をどれだけ食べたらよいか」の回答は「主食・主菜・副菜を組み合わせる」だけでは解答にならず、「3・1・2弁当箱法」による食事法のように,適量を知る食事法との合体で完結できること。

❸しかし、「3・1・2弁当箱法」は食物量を容積で量る「升」の役割に過ぎない。
または年代を超えて使える適量の目ばかり力形成の、身近な道具である。だから、弁当箱を使って食物量を確かめた後に、いつも使っている食器等に盛り直してはじめて「食事」になる!!

➍残されている大事なことはひとり一人の多様な個性、心身の健康状態、ライフスタイルや地域の特徴を生かし、特徴を育てる食事法や食事づくり法を自由に、いきいきと開発することだ。
すでに、各所でこのレベルでの実践が個々に行われているので、これら展開の法則性を明らかにし、かつ「誰でも理解し、実行し、共有できる」楽しい方法の開発である。

⑤これからは、前項②の課題解決のためにも、➃の➍の方法開発、その根拠となる研究、その結果の生活現場での検証、だれでも自由に活用できる理論化の「環」がうまく回るようにしていかねばならない。
そのためには特定部分に固執する前に、人間の食事の営みや地域の食の営みを全体俯瞰する力とセンスが必要になる。

書ききれないので、ぜひ、全文を読んでいただき、討論・会話をしたいです!

NPO法人食生態学実践フォーラムの総会研修会[6月3日(日)13時から]本資料を基に基調講演を行います。関連する実践事例を加えてのシンポジュームを開きますので、ぜひ参加し、討論の輪に入ってほしいと願います。

2018年01月26日 (金) | 編集 |
共食、孤食については1970年代の後半「人間らしい食」を研究模索しつつ実践する「食生態学」の創設期からこだわってきた。「何を食べるか」だけでなく「どう食べるか、とりわけ誰と食べるか」が食事内容や食べた結果に直接影響するなど課題が大きいことを明らかにした。
この時に、家族と一緒に食事をすることを「共食」(キョウショク。トモグイでない)、ひとりで食事をすることを「孤食」(はじめは「ひとり食べ」。しかしカタカナが入る学問分野には公的研究費が出せないといわれて、仕方なくコショク)と名付けのであった。
その後、紆余曲折・試行錯誤を経て、いま共食は「健康日本21」(第2次)や「第三次食育基本計画」を始め多分野の行政や教育分野で行動指針・評価指標等にとりあげられ、全国的に関心を持つ人も多くなっている。
しかし、実行には至らないケースが多く、1週間に1度も家族と一緒に食事をしない小学生が15%以上を占める深刻な現状も報告されている。
成長期の心身の形成に及ぼす、取り返しのつかない負の影響などを心配する私たちに、「受験が終わったらちゃんと一緒に食べるから大丈夫」とか「うちは親子の話し合いの時間を決めて実行しているから、食事の時には必要ないから心配ない」等子どもたち自身が説明をしてくれる現状を含めて、共食・孤食をどうとらえ、日々の生活に位置づけていくのかに未解決の課題が多い。

一方最近、食・健康・教育等からやや離れているように見受けられる分野から、共食・孤食の取材が増えている。
「建築知識」2018年1月号の創刊60周年記念特集―100歳までヒトが元気に長生きできる住まい―もその一つ。若い男性Y記者の基本課題を直撃する質問がメールや電話で繰り返される熱意に負けて、11月のある日小さな喫茶店で取材を受けた。
メールでたびたび「家族との共食頻度にこだわる人は多くなったが、共食の質が低くなっていると繰り返されていましたが、「共食の質」とはなんですか?」だった。
私が積み残して悩んでいる課題に、直球の質問であった。
取材の終わりに「使えるページは見開き2ページだけなので、今日伺った話をイラストで描きたいです」と。もちろん大賛成した。イラストレーター・Y記者から素案を見せていただき、共食のコンセプトに直接触れることや事実関係のチェックをさせていただき、数回のやり取りの結果、この素敵なイラスト(力作)が掲載された。

共食イラスト平井さくら
出典:建築知識2018年1月号 創刊60周年記念特集「100歳までヒトが元気に長生きできる住まい
イラスト:平田さくら

たくさんの間取り図やそのバックデータ満載の1冊の月刊誌の中に、ひときわあたたかい食事風景が1ページ(A4版)の半分を占める大きさで、描かれており、その「問いかけ力」に感じ入った。
特に左下の「しーん これは共食?」という貼り付け風の小パーツである。
右上部のイラスト、家族それぞれのやり取りがあたたかく交わされている食事に対して、小さな貼り付けでは、同じ人物が同じ食卓を囲んでいるのに、それぞれに別のことをしながらの食事である(家庭内だけでなく職場やその近くで仲間と食べる昼食も同じ状況がある……)。
このあたたかいイラストが、さりげなく「あなたはどれ?どちらにしますか?」と問いかけてくる。
「この間にもいろいろある……」と。
イラストなので、共食と孤食の間にあるだろうたくさんの食事の姿、それぞれの背景やプロセスを含めて見通せないほど奥行き深く、広い食事の営みがあることも問いかけてくる。

実は私たちが食生態学を視座に進めてきた共食・孤食研究・実践方法の特長の一つに、1980年代の初めから食事調査法「食事スケッチ法」を開発して活用していたことがある。
一般的に食事調査は栄養素摂取状況把握を中心にすることが多いので、食べた食物の種類や量の正確さを優先するために、子どもたちの食事調査の場合でも、食事の準備に関わる母親や保護者が回答者であった。
しかし、その食事が食べる人自身にとって良かったかどうか、どんな問題が潜んでいるかを確かめたい、内的心的な状態を具体的に知りたい目的であることから、心理学分野等で使用されている描画法にヒントを得て開発したのであった。
「昨夜はどんな食事でしたか?食べた物も一緒に食べて人も描いてください」と発問し、当人がスケッチで回答する方法だ。過去の振り返り調査や、「こんな食事にしたい」という理想の食事調査にも展開して活用した。調査の質を高めるために、10問程度の質問紙調査を加えており、さらに、さらに描かれた食事スケッチを当人と共有し、インタビューでの確認をする方法である。描かれた食事スケッチの、一枚一枚が描いた人の気持ちと現実の行動の間等、無数に近い色合いを表現しており、調査者の視野を超えたさまざまな問題点を浮き彫りにしてくる。そのスケッチを広げて、当事者と専門分野の知識やスキルを重ねながら「私は何をどのくらい、どのように食べるといいか、合っているか」の答え探しをすることになる。

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イラストが問いかける共食と孤食の間の間の間や、気持ちと現実の間の間を見落とさないで「人間らしい食事」の答え探しをしたいです。

2017年09月25日 (月) | 編集 |
いまや、「連携」は食育等社会活動で、当たり前にさりげなく使われています。しかし、すべての生活者に行き届く方向に連携が機能されているか、疑問を持つ場面も少なくありません。

連携が活動の目的に直接つながっていないか?
活動の目的や目標と関係なしに、行政や組織やグループ間の連携が固定されていないか? 
課題が変わっても「連携の図」はしっかり同じ線で結ばれて、固定的な関係で動いていないか? 
肝心の住民や学習者の位置づけが無い「連携の図」も少なくない、等々。

今回の基調講演では、ピラミッド型の連携の図や、固定的に線で結ばれた連携の図からの脱皮のために、地域や組織の特徴を発揮し合い、目的やゴールを共有して進む「ゆるやかな連携」の提案をしました。

例えば、住民や専門家等関係者が共有して使える「自分たちが目指す食」の教材づくり。その作成に関わる編集・出版の専門家も連携のキーメンバーに位置付けるような「ゆるやかで、襞深い連携」の視野・視点です。

基調講演の全文
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皆さん、こんにちは。今、3人の事例報告に圧倒されました。一つ一つ丁寧に日々の活動を重ね、そしてそれなりに自分達や周りの評価も得ながら、食育の環が広がっていく様子を聞かせていただき、ありがとうございました。もう私の基調講演は要らないのではないかと思ったのですが、隣の局⻑に駄目と言われそうなので、お話をさせていただきます。

時間は限られていますが、お手元に、『連携と人づくり』という縦書きのレジュメに当たるものがあります。そして、もう一つは、パワーポイントの打ち出しをしたものです。これから、パワーポイントを使って問題提起をしますが、ここには大事な図だけが入っています。多分、皆さんが、それぞれの立場で、自分の所でもそれをたたき台として使用できるかと思われるものをコピーしました。この2種類の資料を使いながら、問題提起をしたいと思います。

いただいたテーマは、連携と人づくりです。局⻑からの指示のとおり、連携と人づくりに焦点を絞った形で問題提起したいと思います。この図は 皆様ご存知の第3次食育推進基本計画です。 第1次、第2次 食育推進基本計画の実績を踏まえ、第3次が出されました。一番上 に、『実践の輪を広げよう』と書いてあります。これは、5つの重点課題を出し、それをうまく進めながら、真ん中の食の営みの質を高めていこうという提案、総括の図です。

今、受賞者の皆さんが話してくれたのは、 それぞれの地域や課題を踏まえてこの図を充実させていく活動でした。

着々とアイデアを出して、いいつながりを作りながら活動されていました。図の中心には、第3次食育推進基本計画を進めるに当たり、国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業者など色々な組織や関係者が、主体的、かつ連携・協働しながら、食育の取組を推進することというモデルの図です。周りにはそういう組織が並んでいますが、一番大事な生活者は、真ん中の赤い丸の所に位置づいています。

ですから、これは、色々な連携をして五つの重点課題を軸に、食育の質を高めていくための図になります。

今日、注目したいことは、この赤い丸の所にいる国⺠の全ての人に食育が行き届いているかというと、そうでは無い現状があることです。

例えば、「食育に関心がある」と回答する人は75%を占めますが、食育の中でも重要視されている朝食をほとんど食べない、又は2-3日しか食べない人は全世代の平均で11%以上。特に若い世代は24.7%と高率を示しています。たくさん例を挙げても仕方がありませんが、何が言いたいかというと、国⺠全体の中には、そうした食育の活動が届かない、食の課題を解決できていない人達が少なくないという現状を、私達はきちんと認識しなければいけないということです。

第3次食育推進基本計画は、今までどうしても積み残しがちだった人達にも行き届くように、食育の環を広げていこうということです。1992年に、安全で栄養的に望ましい食物をアクセスすることは、人々の権利であるという「世界栄養宣言」がなされました。もちろん日本国憲法でも、健康は人権として保証されています。そうなると、今の図の真ん中の赤い所で積み残された人達を、自分がしないからいけないと放っておくわけにはいきません。どのような事情があろうとも、全ての人にきちんと人間らしい食を保証していくことが必要であり、そのためには食育が大事だということです。

食の営みを、もう少し丁寧に見てみます。内閣府の食育読本で紹介されています。この下敷きは、今から50年くらい前、私が保健所の栄養士であった頃、地域の栄養不良の子供達の問題解決のための協力者探し、今で言う協力・連携の人探しのために描いた地図でした。右側に示したものは、食物の生産から加
工、流通、調理、食事というフードシステムです。そして、左側は、食情報システムです。こうした地域で、前のスライドの真ん中の人々は、日々の生活を営んでいることになります。

食を営む力を形成していくことは、まさに生きる力を形成していくことにつながります。そして、それは個人の生きる力であり、家族の生きる力、地域の生きる力、国の生きる力、世界の生きる力というふうに広がっていきます。これらの力が、次の食料生産、加工流通、...食べる...と循環していく「地域の食の
循環図」です。

このようなものは見飽きたと言いたい方もいるかもしれませんが、二つほど確認をしたいとこの図を出しました。まず、食といっても、これほどたくさんの場所で色々な営みがされているわけです。今日はお昼においしいお弁当をいただきましたが、そのお弁当ひと箱の中には、今までの発表にもあったように、色々な場の、色々な人達の活動が全部染み込んでいるわけです。

そう考えると、食事そのものは、色々な人達の連携によって作り出されているということです。ですから、何か特別に食育の連携をしなければいけないのではなく、食そのものが既に連携の中で生まれて、それが次の連携につながっているわけです。この当たり前のことを、今日は確認したいと思います。

もう一つは、だからこそ、私達を含めて、先ほどの図の赤い丸の中にいる食育活動から積み残された人達にも行き届くような「人間らしい食」の実現は、誰かが1人で頑張ればできることではなく、やはり連携の力なしには成り立たないということです。ですから、今日のテーマの連携は、当たり前の営みを、当たり前に動かしていくにはどうしたらいいかということになるのだと思います。

私事で恐縮ですが、私も保健所の栄養士時代から悩んでいました。一生懸命協力してくれる人は、研修会や講習会に声を掛ければ、すぐに集まります。一方、声を掛けても、こちらから訪問しても協力の輪に入ってくれない人が多くいました。

東京都衛生局でも同じ悩みを未解決のまま、女子栄養大学に移りました。開発途上国の子供達の栄養問題に大変心を痛め、その活動に入りました。その経過の中で私は、ロンドン大学人間栄養学部客員教授に招へいされ、今まで知らなかった多くの研究者や本と仕事を共にすることになります。パワーポイント右
上の赤い所に紹介した『My name is today』という1冊の小さな本は、国際協力関係者の必読の書の一つです。識字できる人が少ない地域ではイラストが活用されます。

これは、その本の中の1ページです。英語のままですみませんが、これは医療の話です。一番上に医師がいます。皆さんの中に、医師の方がいたらごめんなさい。医師が悪いと言っているわけではありませんが、ここでは、本当に住⺠の人達が健康になるためには、いつもトップに医師がいて、その下に看護師がいて、その下に色々な専門家がいるというピラミッド型の指示・共同型では、必要な緊急課題や重要課題には充分に対応できないと言っています。一番大事なのは、住⺠主体で、健康になっていくことです。ですから、このピラミッドを少しひっくり返して、住⺠が自由になり、そのときの課題に合わせて、医師や看護師や必要な人がトップでマネジメントするという形になっています。

ここで言いたいことは、課題に合わせて連携の組み方は違うということです。課題を解決するために、一番いい組み方をその都度考えていく。そこには連携ができる人達やグループ、組織が色々あり、必要に応じて組み立てていくということが、本当はいい連携だということです。

私はこれを見て、夜眠れないほど興奮しました。つまり、きっちりとしたピラミッド式の連携も必要ですが、それだけでなく、もっと緩やかな連携も必要だということです。私の連携観に強烈な変動を与えた図です。

では、「ゆるやかな連携」をどうとらえ、どう見える化し、共有するか?日本では、待望の食育基本法の下、都道府県市町村では食育計画策定委員会を作り、具体的な検討が始まりました。この図は関東のある市の検討過程で描いた「ゆるやかな連携」を重視した図です。

行政の組織図の線を外し、係をばらばらにしました。そして、係の名前を左端に順番を決めずに並べていきました。組織には上下関係がたくさんありますが、それも全てばらばらにしました。その時の課題に合わせて、多様な組み合わせの連携ができることを、行政の関係者はもちろんのこと、市⺠も共有したいと、作成したのでした。残念なことに、策定委員会の提案は、食育指数には取り入れられず、いつもの組織図と同じに、しっかり線で結ばれて印刷配布されました。だから、幻の図と呼んでいます。

2008年の食育推進大会で基調講演をしたときに、私はたまたまこの幻の図の話をしました。そのとき、「地域や暮らしている人達、抱えている食の問題が違うところで、同じピラミッド型の連携の図では、答えは出ない。しかし、地域には同じように育った専門家がたくさんいるわけだから、その人達を目的によってうまく組み合わせることが大事だ」という私の話をじっと聞いてくれた背の高い素敵な男性がいました。私の講演が終わると、彼が戶口で待っていました。そして、「私は食育の担当ですが、是非相談に乗ってほしい」と言われました。結果、私は食育計画の委員会の委員⻑をさせていただき、それで出来上がった図がこれです。これは幻ではなく、愛知県K市作成です。

小さくて見えないかもしれませんが、市の花であるチューリップの中に、色々な部署やグループの名前がたくさん書いてあります。そして、ここには隙間がたくさんあります。なぜかというと、ここに私達が知らないグループや組織の名前を書き込むためです。真ん中には赤い所を、わざと残してあります。

私が言いたいことは、連携にはモデルがあるのではなく、課題に合わせて、可能性のあるものがうまく組んでいくことが大切だということです。先ほどの報告の中で、マネージする役割という言葉を使ったグループがありましたが、まさにそれを組み立てたり、マネージしたりすることを、行政や大きな組織だけでするのではなく、先ほどの市⺠や、赤い輪の中の人達も一緒にするということです。

今、認知症の人達からは、認知症のことを専門家だけで決めないでほしい、自分達の意見も聞いてほしいという声が全国で上がっています。それはとても素晴らしいと思います。食育も同じことです。全ての人が生きている限り関わっている食育について、発言する場をどう作っていくかということが大切なこと
です。

しかし、地域の「食の循環」の中での自分の役割を理解していない、遠慮して出てこない関係者も少なくありません。これは埼玉県S市の事例です。各組織はそれぞれに、活発な活動をしていますが、横のつながりが生まれないことを、当時の保健所部⻑(管理栄養士)が悩んでいました。ある時に、食品衛生管理の研修会の時間を借りて、S食育ネットワークの会という仮称で、保健所管内の食の関係者、皆に参加を呼び掛けました。

地域の「食の循環図」の中に、参加者各自が勤務場所にシールを貼ります。この地域の食の営み全体の中のどこにいるかということを自分が確認して、自己紹介するという工夫でした。これを見ると、左側の、色々な教育機関や病院の人は集まってきたけれど、右側の農業生産や、食品加工、流通に関係する人達が少なく、おそば屋さんのオーナーのおじいさんが1人来てくれただけでした。彼が1人で、あまりにも場違いだと帰ってしまいそうになるほど、分布は偏っていました。

地域全体の食の循環をうまく回すためには、左右両方の分野の人々の協働が必要です。

そこで、私達はもうひと工夫しました。当時の人気番組の「プロポーズ大作戦」という番組からヒントを得て、ここに書いてあるようなワークシートを作り、参加者に、このワークシートに書いたことを含めて自己紹介するようにお願いしました。

自分達はどこから来たのか、どのようなことをしているのか、このような活動をして、それをさらに高め広めていくために地域の食に関わる方との連携が必要なので、誰かに協力、連携してほしい。一番協力してほしい団体の名前を、外食産業、ファストフードなどと書いてもらいました。びっくりしたことは、左の参加者の約7割は、食品流通関係の協力が欲しいと記載したことです。

おそば屋の主人は病院、学校、福祉施設、消費者グループ等から「協働したい」というプロポーズを受け、食品流通・販売分野の食育における必要性を知らされて、中座できずに、最後まで話し合いに参加されました。

S食育ネットワークの世話役になってもいいという人も現れ、その日に会は成立したのです。そして、初めは、毎月1回あるいは2カ月に1回という頻度でメンバーの活動の場所を会場にし、具体的な食活動や課題を共有する形で、続いていました。今は少し休眠中ですが、このとき、フードシステムと情報発信システムはメールなどで連絡を取りながら連携ができるようになり、これが手の届かなかったところに少し情報が行き届くようなきっかけになりました。

次は、高齢者バージョンです。地域の食の循環の図としては、第3次食育推進基本計画の図が、今は全国どこにでもあります。しかし、自分がその中のどこにいるかということを分かっている人は意外と少ないです。すなわち、行政で出した図は、役所でもらった図、学校の研究会でもらった図ということで、自分がその中に位置付いていない。自分の位置が示されている図ではないわけです。私はそこに、食育が全ての人に行き届かないもう一つの理由があるように思います。

これは高齢者が自分の生きがいに向かって、専門家の人と一緒に話し合いながら学習するためのワークシートの1ページです。現地調査の結果を描き込んだ「私の住んでいる地域の食の循環図」といえます。さらに、右の図は自分が日常的に食物を入手する場所や小情報を得る場所を結んでいますので、「自分にとっての食の循環図」になっています。 本当は行きたいけれど、行けない所にはハート印を付けて点線で結んでいいことにしました。そうすると、たくさんの線を書く人が出てきました。

その作業をしながら、あるお年寄りは、「スーパーマーケットというのはあまり行かない方がいいと思ったから、さっきは行かないと書いたけれど、本当は大事な所だったから2本の線にする」など独り言を言いながら図を書き直していました。公的な、一般的な資料を人々が活用できる資料にする工夫が必要です。具体的な課題発見や確認ができ、具体的な支援や具体的な連携の方法を検討する基本情報につながります。

「食の循環」をとらえることの重要性は理解できるが、難しい。子供達には特に難しい、という人が少なくありません。しかし、現実の食育の中で、子供達こそ食の全体俯瞰・俯瞰統合的な観方に興味を持ち、得意な場面を多く見てきました。発達段階に応じた教材を共有することの必要性と学習可能性を強調
したいと思います。

1枚目は東京都の食育推進で都内全小学生に配布した副読本の初めのページです。私が策定委員⻑で提案し、目次の代わりに、「食の循環図」を描き、該当するページ数を入れました。子供達は読みたいページを探したりします。2枚目は、2003年から継続研究と実践をしている、一般財団法人東京水産振興会の「さかな丸ごと食育」の主教材、「さかな丸ごと探検ノート」の初めのページです。子供達が自分達の地域の条件で部分修正をしたり、特定の魚を取り上げて、その魚の事例で「食の循環図」を描き直す学習をしたりしています。連携を具体的に、全体の中で学んで行きます。

このテキストをいかに自分と関わりを持たせながら使っていくかという例が、ここにあります。先ほどの図を引き伸ばして壁に貼り、子供達には、知っている魚の名前と出会った場所にシールを貼ってもらうというワークをしました。そうすると、子供達はこれほどシールを貼りました。カツオ、お刺し身など、魚は、自分が食べたものでも、話を聞いたものでも何でもいいです。

これは17人で行ったワークでしたが、216枚もシールが貼られました。そして、こうしてこの図が貼ってあると、家に帰ってから出会った魚を思い出した子が、またそこに来てシールを追加したりするのです。そうなると、その図は単なる1枚の図ではなく、自分としっかり関わった世界に1枚だけの図になります。

これは、宮城県の東日本大震災で大打撃を受けた南三陸町の漁協の方々とご一緒する中で、宮城学院女子大学の平本研究室ゼミの学生達が、現地の小学生達と一緒に、自分達で銀ジャケの冊子を作ったという例です。

皆さんはもうお気付きだと思いますが、連携をするためには、実際に食についての問題を持ち、行動を変えていかなければいけない生活者の人達と、それを専門家として支える人達が共有できるテキストが必要です。教材とは、学習者と支援者との間にあって、学習目的を達成できるように構成された文化財である、と言われています。

それは、決して分かっている人が分からない人に教えてあげるためのテキストではありません。本当の教材は、両者の間にあり、両方が発言し合ったり、工夫し合うことを直接つなげて、もっといいアイデアを出したり、解決策ができたり、行動や評価ができるための間を取り持つ文化財なのです。つまり、連携
には、お互いが共有できる有効な教材が必要なのです。

このパワーポイントは、多様な食・栄養ニーズの住⺠・子供達と共有できる考え方・教材の要件を整理したものです。学習者側の期待は、興味が涌いてくる、理解し易い、実行し易い、ストレスが少なく継続できる、家族や仲間に伝え易い等があげられます。これらのニーズを叶えるキーポイントとして整理すると、右側に示すように、楽しい、変化したい行動に直接役立つ、効果が分かり易い、生きがいにつながる、環境や地域づくりに役立つこと。一方、マイペースで学習できる、誰とでも交流し易い等になります。最下段に書いた科学的根拠の必要性は厳しく、植物が直接体内に入り、生命活動に関わるので、間違いが許されないことを示しています。

最後に、連携で共有する「教材」の制作も編集や出版を含む他分野の専門家とのゆるやかな連携の一環であることを紹介したいと思います。

今、食育の行動目標や評価指標として全国的に活用されている「主食・主菜・副菜を組み合わせる食事」についての食育教材を例にいたします。

食育の基本的な課題の一つ、人々は健康で人間らしい生活を営むために「何をどれだけ食べたらよいか」について、従来は栄養学等の研究成果を基に、栄養素の選択方法を指南する「食事摂取基準」や食材料の選択方法を指南する「食品群や食品構成」を学んできました。しかし、栄養素は体内や食品の内部に存在するので、人々の行動変容に直接使うことができない。食材料は買い物や調理をする人は活用はできるが、外食や中食が多い人には使えないことなどから、全ての人が食事で選択する食物の形態である「料理」の選択法の研究開発が行われました。日本の食文化で育まれた知恵の一つである「主食と主菜と副菜を組み合わせる」食事法が、食事摂取基準や食品群による選択法との整合性が高いことを示した図です。さらに、「どれだけ食べたらよいか」に対応する方法として、食生態学を基礎にする研究成果である「3・1・2弁当箱法」を提案し、これも全国的に活用されています。パワーポイントはこの食材教材として1985年から作成してきた「食育カレンダー」、次のパワーポイントはその英語版です。

次に、この「食育カレンダー」を制作し、食育活動に活用するプロセスをフォローし、各段階での具体的な連携の状況を書きだしてみました。食育のゴールを目指して、ゆるやかな連携のネットワークがすすめられていること、このことなしに、一人残らずの人々に行き届くような食育はなしえないことを再認識する次第です。

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●会の全体像は以下をお読みください。
食育シンポジウム2 「連携と人づくり」食育の推進事例から考える
第12回食育推進全国大会の開催結果報告






2017年07月17日 (月) | 編集 |
5月22日のこのブログに“難産だったので、出版できてうれしい”と書いたこの本の、活用の輪が着実に広がっています。心から感謝いたします。

その一つが、食の個性的な雑誌での紹介です。
ここでは「栄養と料理」8月号と「学校給食」8月号の紹介をさせていただきます。

0717001.jpg0717栄養と料理8月号

0717002.jpg0717学校給食8月号

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