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2019年06月18日 (火) | 編集 |
標記の論壇1)を読み、NPO法人食生態学実践フォーラムの機関誌名を「食生態学―研究と実践」とせずに「食生態学―実践と研究」にこだわってきた2)私は、深い感銘を受け、大きな勇気をいただきました。

感銘を受けたことはたくさんありますが、圧巻は、アクションリサーチの古典といわれる1931年公表のレヴィン(Kurt Lewin)論文とその解説等を取り上げ、レヴィンの研究哲学やアクションリサーチのキーになる文章の一言一句を丁寧に読み解き、論をすすめていることです。
今「実践と研究」をめぐるトレンドな方法論の一つであるアクションリサーチが既に、私が生まれた1936年以前から、熱っぽく議論されていたという事実を今まで知らなかったことを恥じ入り、そして感無量です。

最近はなぜか(栄養学分野だけかもしれませんが)、科学的根拠となる研究や文献のシステマテックレビューについて、新しい研究ほど評価が高く、ややもすれば、当該概念について創生期の難産のプロセスや背景を含めた根源的な議論が少なくなりました。
安定期に入った新データーの量的研究成果が優先され、わかりやすくまとめられた論文や報告書が多くなっています。
激動する環境変化や生活の多様化がすすむときだからこそ、当該概念の原点・中核の議論が必要と思います。
用語だけが独り歩きし、学会誌掲載というお墨付きで、行政や教育の行動指標や評価指標に使われ、全国的に同じ方向に実施・普及されていくようで、不安・心配をしていましたから。

勇気をいただいたことも多くあります。
とりわけ、「食生態学」実践と研究の過程で表現したい内容の適切なキーワードを得ずに、混線していた次の点について、もつれた糸解きの基を得たことです。

(1) アクションリサーチとアドボカシーの関係を明確にする論考の中で、両者の関係や関係の強さはいろいろあリ、アクションリサーチは実験型、組織型、専門職型、エンパワーメント型の4種に大別して考えられること。
その中の実験型についてレヴィンは「『科学的アプローチによって、社会問題や社会生活の改善のための仮説の生成、その仮説の実験的な実践、評価、改善』という循環的なプロセスをたどるリサーチである」と説明していると紹介されています。
社会生活等の改善から出発していること、そのために生成した仮説を“実験的な実践”で検証していること、これらの循環的なプロセスをたどるすすめ方を価値づけていることです。
食生態学では未成熟であっても仮説生成を重視し、“生活実験”“地域実験”と名付けて、まさに仮説の実験的な実践、評価、改善を繰り返してきました。このときに「食の営み」の特殊性を基礎に、学習者主体、住民主体、当事者と共にすすめる実験的実践であることを特徴としています。実験的実践はそうでなければ実行できないです。
こうした思いが、本稿の冒頭に書いた「食生態学―実践と研究」へのこだわりになっています。

(2) アクションリサーチという用語を使っていないが、その思想や方法論を同じくして既に活動してきた実績を評価していることです。
論壇の事例に挙げられている岩永俊博グループの活動理念や地道な地域活動については、岩永医師が国立公衆衛生院在職の頃、私は(同院行政栄養士研修の「公衆栄養」を担当させていただいた関係で)岩永医師とたびたびお会いし、“現場でのニーズに寄り添った地域健康づくり実践”の必要性、プログラム形成や仲間づくりの必要性やむずかしさ等について話し合い、教えていただいていました。
「こうした地域活動は研究とは言えない」という大学・研究機関の関係者の評価が多い中、岩永医師は「研究と言われなくてもいい。地域の人や関係者が必要なんだから」と繰り返され、自分たち自身は割り切れても、若い人々を誘い込めない社会的な難しさ等を、話し合い、慰め合っていたことを思い出します。
論壇の中で「岩永医師の……地域の夢を追いかけて実践されてきた活動は、参加型であり、民主的であり、かつ社会の変化をめざしている。それだけではない。見かけにとらわれない本質を取り出し、よりよい研究方法を求める姿勢が常にみられている。……過去、アクションリサーチという言葉を使っていなかっただけである」の一節に、大きく納得でした。
そして、(神馬教授の表現を使わせていただけば)アクションリサーチの用語は使っていないが、「食生態学―実践と研究」もいっしょに褒めていただいたようで、大変うれしく、勇気づけられた次第です。
1931年の原点に立ち戻って、アクションリサーチの研究哲学をふまえた「食生態学―実践と研究と……」へとシフトアップしてゆきたいです。

文献
1) 神馬征峰.アクションリサーチ:知と信の融合を超えていけるか.日本健康教育学会誌.2019;27-2.137-142.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/27/2/27_137/_pdf/-char/ja
2) 足立己幸.「食生態学―実践と研究 第10号」記念に感謝.食生態学―実践と研究.2017;10.4-7.

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