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2013年01月08日 (火) | 編集 |
考えることが多く、しかもそれらが絡み合ってしまい、原点に戻りにくくなって、どれも解決できないで、宿題を沢山残したまま新年を迎えました。
そんな時にFuture Earthという言葉(日本学術会議大西隆会長の新年のあいさつ文)に再会しました。

一度目はもう25年以上前に、ロンドン大学熱帯医学衛生大学校人間栄養学部大学院生ゼミで、当時私を客員教授に招聘してくださったPhilippe Payne教授がアフリカや東南アジアの栄養不良問題解決にはFuture Earthの視野が重要だと話された時です。
当時私は「人間・食物・環境の関連の概念図」のたたき台を描いて、その検証や政策立案には身近なコミュニテイから国サイズや大陸サイズ、そして地球サイズへと考えを広げ、かつそれらの重層性を検討しなければならないと考えていました。
そうでなく地球全体から出発して、アジア大陸、日本、関東、埼玉県狭山市…という俯瞰的な観方との双方向的な見方が必須だというのでした。
もちろん自分ではそう理解し、試行してきたつもりでしたが、その内容がきわめて抽象的な内容に留まっていることをズバリ指摘された感じでした。
P. Payne教授の発言は鋭く、はっと目が覚めて全身が震えたのを覚えています。
言葉では地球レベルや地球サイズを繰り返していたのに、課題分析や将来展望の中に具体化できずにいたのでした。

次に紹介する挨拶文で使われているFuture Earthの意味はさらに深い意味を込めているかと思います。今、多くの未解決の課題を抱えている私にとって“古くて新しいキーワード”との出会いに、感謝しています。この言葉を今年は大事にしてゆきたいと思います。とりわけ、栄養教育・食育のゴールに生活の質QOLと環境の質QOEの“より良い共生”をめざしている私たちにとって、具体的な検討をするキーワードになるかもしれないと。
(とはいえ、挨拶文冒頭の段落(3行)は、解釈がいろいろあろうし、私には受け入れがたいです)
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日本学術会議大西隆会長からのメッセージ


新年明けましておめでとうございます。
昨年末の総選挙で、安倍晋三内閣が誕生し、新たな気分で新年を迎えた方も多いことと思います。
新政権の下で、科学技術政策がさらに拡充され、科学技術立国が推進されることを期待します。

Future Earth(地球の未来)という国際的な研究プログラムが、日本学術会議も参加するICSU(国際科学会議)や、ISSC(国際社会科学評議会)、国連組織等によって準備されています。まだ全貌が見えていないのですが、地球環境問題で警鐘を鳴らしてきた大気、海洋、陸地や地殻の地球観測に加えて、人間社会の政治、経済、文化等も観察対象に取り込み、人間の活動と地球の変化を統合的に考察すること。
地域間、地域内等、様々なレベルでの公平性を重視しつつ世界の発展を追求すること。
これらを踏まえて、持続可能な未来を築くために、様々な主体による適切なガバナンスを構築すること。
という包括的で学際的なテーマが設定されていて、文明史的な観点から現代工業社会を見つめ直し、新たな文明への手掛かりを掴もうという意欲的な試みです。
日本学術会議も、Future Earthの国際的な取り組みに積極的に参加していきたいと考えています。その理由は以下です。

第一に、2011年3月11日の大震災によって、科学の探究とその応用が本当に人の生命や幸福を重視して行われてきたのかに大きな疑問が投げかけられたことです。
科学的探究を中途半端なところで切り上げていないか、安全性に未だ不安があるにもかかわらず安易に応用されていないか、科学の応用を中止したり大きく方向転換したりする勇気を持たなかったのではないか、という疑問に、特に日本の科学者は真剣に向き合う責任があります。
Future Earthは、人と地球の相互関係という大きな枠組みで、人の営みを再考する大きなきっかけになります。

第二に、日本が急速な人口減少社会に向かうことも、根本に立ち返って文明の在り方を考える動機を与えます。
総じて幸福で、不安の少ない人生を送る人が相対的に多いと見られる日本社会では、子孫を残して同じような生活を送らせたいと思う人が多くてもよさそうですが、現実は人口ゼロに向かって着実に進んでいるともいえます。
何がそうさせているのかを深く考えることは、これまで享受してきた物質文明、それを支える社会構造や価値観の全体を見直して、未来社会への革新の手掛かりを掴むことに繋がります。これもFuture Earthの重要テーマです。

第三に、Future Earthは文字通り地球規模で国際的に発想し、交流することを求めるのですから、日本人、特に日本の科学者が必要と感じている国際化の進展を促す格好のテーマになります。
科学の成果ともいえる日本製品が世界各地で日常的に使われていることに示されるように、科学を探究し、応用することは、国際的に大きな影響を与えます。
その意味で、科学は国境を越えて探究されなければならないし、特にその恩恵は様々な困難に直面している地域や人により多く与えられなければならないでしょう。
日本の科学研究は、まだまだ国際的な広がりを持つ余地があり、Future Earthの取組がそれを促すことになればいいと思います。

昨年末に日本で講演したICSUの Yuan Tseh Lee(李遠哲)会長は、世界人口の5割以上を占め、経済活動の核となると見られるアジアに日本が位置すること、そのアジアでは、日本も含めて、自然環境を構成する一部として人間を捉えて、両者を一体とみなす考えが育ってきたことがFuture Earthの研究を進めていく上で重要な哲学となっていくであろうとして、日本が積極的な役割を果たすことへの期待を表明してくれました。
こうした期待に応えるためにも、私は、日本学術会議でもFuture Earthに向けた議論を興し、世界的な試みをリードしていきたいと思っています。

2013年1月 第22期日本学術会議会長  大西 隆